yama1931’s blog

長編小説とエッセイ集です。小説は、明治から昭和の終戦時まで、寒村の医療に生涯をささげた萩市(山口県)出身の村医師・緒方惟芳と彼を取り巻く人たちの生き様を実際の資料とフィクションを交えながら書き上げたものです。エッセイは、不定期に少しずつアップしていきます。感想をいただけるとありがたいです。【キーワード】「日露戦争」「看護兵」「軍隊手帳」 「陸軍看護兵」「看護兵」「軍隊手帳」「硫黄島」※ご感想や質問等は次のメールアドレスへお寄せください。yama1931taka@yahoo.co.jp

戯れ歌

戯れ歌

 

鶏肉にあまたの野菜切り刻み煮込んでみたが不出来なりけり

 

おさんどん傍目に見れば簡単と思えど実は容易ならざる

 

新たなる料理を試し作らんとやってはみたが上手くいかざる

 

かくなれば店の刺身を買ってきて酒の肴にこれが最高

 

料理にはあれこれ手数かけずしてあっさり作れば舌鼓なり

 

暑い日は胡瓜膾に冷や奴これを珍味と喉越すビール

 

菜園に出来たピーマン青々と目にさわやかに歯ごたえも良し

 

ミニトマト鈴なりになり誰彼と配れば皆に喜ばれぬる

 

秋野菜種まき終えて朝夕に撒水すれば双葉出でたり

 

この暑さ庭の草木もうなだれて水をやらねば熱中症

 

寿命とは命の続く間なり短くあれど寿(ことほ)ぐ命

 

亡き人を想いて善事を実践すこれぞ真(まこと)の追善供養

 

世の人は金さえあればと言うけれど真(しん)の生き甲斐外に求めん

 

名も知らぬ春の野草の花々は黄と白とが多く目に付く

 

見られても見られなくても咲き出でてまた消え失せる野辺の草花

 

草花の命に長短あればとて人の命も儚きものか

 

水温み川の流れに浮かぶ鴨われ近づけばサッと飛び立つ

 

ドイツ語の老いたる教授訪ね来て 自分一人と今日もつぶやく

 

いつ来ても同じ会話に終始する 哀れなるかな教授と云えど

 

読んだこと直ぐ忘れるといながら 文(ふみ)読む姿は一心不乱

 

ファウストの研究一途の人なれど 今は惚けたといつも口癖

 

惚ける前死を迎えたら幸せか 人の運命分からぬものぞ

 

死ぬまでは惚けずにいたいと願うけど こればっかりはどうにもならぬ

 

長生きは考えものだと痛感す 呆け老人の悲哀を見れば

 

惜しまれて死んだ人こそ最高の 幸せなりと今思うなり

 

コロナ禍を知らずに逝きし亡妻は 幸せなりと我思うなり

 

硫黄島敵も味方もことごとく 散るぞ悲しき戦(いくさ)なり

 

吾が国土愛する人を守らんと 硫黄の島に散りし武士(もののふ)

 

万葉集二つの英訳比べ見て かくも違うと驚きにけり

 

名訳は原書の心を伝うなり 単なる直訳愚訳と云わん

 

名訳をなさんとすれば完璧に 二つの言語身につけてこそ