yama1931’s blog

長編小説とエッセイ集です。小説は、明治から昭和の終戦時まで、寒村の医療に生涯をささげた萩市(山口県)出身の村医師・緒方惟芳と彼を取り巻く人たちの生き様を実際の資料とフィクションを交えながら書き上げたものです。エッセイは、不定期に少しずつアップしていきます。感想をいただけるとありがたいです。【キーワード】「日露戦争」「看護兵」「軍隊手帳」 「陸軍看護兵」「看護兵」「軍隊手帳」「硫黄島」        ※ご感想や質問等は次のメールアドレスへお寄せください。yama1931taka@yahoo.co.jp

「礼」について

夜中に目が醒めた。時計の針は2時15分を指していた。起きるには少し早いので、床の中で吉川英治氏の『私本・太平記』を電子書籍で読んだ。これだと室内の明かりなしで読めるから有り難い。息子が買ってくれたお蔭で、私はこれまで同じ吉川氏の『宮本武蔵…

焼く

子供の頃学校から帰って来ると、「仏様にお盛り物が上げてあるから、あれを下ろしてきて食べなさい。」と云われて喜んで食べたことがある。今の人に「お盛り物」と云って直ぐ分かるかなと思った。これは仏壇に御供えしたものだが、最近は我が家の近くの造成…

和倉温泉と和太鼓

前にも述べたが、自分一人でも西田幾多郎と鈴木大拙の記念館を訪ねようと思っていたところ、林さんに話したら直ぐに一緒に行こうと云ってくれたのは本当に有難かった。お蔭で彼の提案で能登半島の付け根に位置する和倉温泉へ初めて行くことが出来た。彼は地…

鈴木大拙館

11月27日。和倉温泉での早朝の入浴。これこそ温泉宿での最高のもてなしだ。小原庄助さんの「朝寝、朝酒、朝湯が大好き」の心境が分かる。食堂にはすでに多くの泊まり客がいた。バイキング方式の食事だから、皆盆を手にして歩き廻っている。朝食を終え部…

旅立

一 昭和三十九年四月、山口国体の翌年に私は母校の萩高校に転勤した。その後一人の国語の教師と知り合いになった。彼は今生きて居たら丁度九十歳になる。彼は数奇な運命を辿っている。生まれは徳島県で三木泰博という名であった。徳島には戦前には三木武吉、…

地所の処分

一 今年は萩から移植したモミジが例年より赤く染まり、吹く風に「裏を見せ表を見せて」しきりに散り、茶席の庭は一面緋の毛氈を敷いたようになった。パソコンを開いて偶然にも丁度一年前に書いた文章が出てきた。「落ち葉」(注:この文章を『風響樹』次号に…

雷電と天神

1 令和4年1月23日(日) 朝からしとしとと氷雨が降る。『風響樹』の合評会を我が家で行うので、7時に起きて居間を片付けた。昼過ぎ1時前、3人の同人が雨の中に見えた。早速冊子の出版費を各自執筆したページ数に応じて支払う。今回は私が一番多く書…

野菜のクラスター

カクテルとは「ウイスキー・ブランデー・ジン・ウオッカ・リキュールなどの洋酒をベースとして、シロップ・果汁・炭酸飲料・香料・氷片などを調合した混成酒。」と『広辞苑』に載っていた。随分手の込んだ酒だと思う。洋酒のチャンポンに過ぎないのでないよ…

無私と無心

父が残してくれた本が我が家に『茶道全集』以外に20冊ばかりある。蔵書と言える數では決してない。その中に『大日本讀本』という国語の教科書がある。厚紙で出来た帙に収めてある。私が愛読しているもので、これは昭和6年6月に冨山房から発行されている…

『坊ちゃん』にある「擬態語」

最近たまたま図書館で井筒俊彦のことを書いた本を借りて帰り読んだ。彼は古今東西の思想・哲学を本当に知るには、それを書いたその国の言葉を理解しなければ駄目だと決心して、英・独・仏語はもとより、ギリシャ語、ラテン語、さらにヘブライ語からロシア語…

『方丈記』を読む

久しぶりに『方丈記』を再読した。このような古典は年齢に応じて読後感が異なるというか、理解が深まるように思う。とくに身の回りの変化、つまり環境の変化に伴い心境も変わって来ているので、古典を読むことで、自分の事や世の中の事をより深く考えるよう…

昭和七年(1932)十一月七日は実母の祥月命日である。母は明治四十年(1907)二月二十日に生まれている。私を産んで九ヶ月後に亡くなった。二十五歳の若さだった。母が亡くなる前に、「孝夫をよろしく頼みます」と、父の妹である私の叔母に云った、…

乃木大将と夢

1 令和4年2月18日(金)の朝、寒い中を起きて外へ出てみたら、屋根や地面に、また庭木にも真白な雪が降り積もっていた。玄関の傍にある梅の古木の枝に積もっている白い雪と、ちらほらと咲き始めた薄桃色の花が調和していて、なかなか風情のある景色だと…

白色の美

1 戸外を歩いていてこれは白いと思うものはいくつかある。 白蓮はその名の如く真白い花である。我が家の畑にはシロヤマブキが咲いていているし、エンドウには白い花がついている。散歩道には白いチューリップが植木鉢の中に、また名も知らぬ小さな白い草花…

梅雨明けの朝の一時

テレビは東北地方の梅雨明けを報じていた。西日本はそれより二日くらい早かった。一昨日第二回目のワクチン接種を受けたが、熱も出ず痛みも感じなかった。ただ昨日は前夜早く寝たためか二時過ぎに目が醒めたので、頭がどうもすっきりしなかった。今朝は日頃と…

夢枕に立つ

私は一昨年から毎朝晩、法然上人の『一枚(いちまい)起請文(きしょうもん)』を仏前で誦することにしている。それまでは『般若心経』を唱えていたが、今は専ら『一枚起請文』を読誦(どくじゅ)する。大した理由はないが、阿弥陀仏の慈悲の教えの方が私の今の気持…

徳佐の禅寺

台風14号が山口県を直撃するというので心配していたが、四国方面へ逸れたのでその点杞憂に終わった。したがって18日の土曜から秋晴れの好天気となった。もし台風が直撃したら心配することがあった。それは長男の嫁の父親の納骨が19日の日曜日に予定さ…

冬季雑感

令和4年は西暦2022年である。しかも今日は2月22日と、数字の2が並ぶ珍しい日である。もう一度書いてみると、2022.2.22となる。朝5時に目が覚めたので起きて洗顔の後、この正月から読み始めた大佛次郎著『天皇の世紀』を開いた。その第2…

都鳥

私は毎朝五時前後に起きる。目覚まし時計をセットはしないが、夜九時には床に就くので七時間は熟睡したことになる。従って睡眠時間は充分足りているから、起きたとき頭はすっきりしている。まあそうは言っても頭が回転するのは朝食迄くらいだろう。起きたら直…

転而不動

2年前の夏のことである。2坪ばかりの我が家の狭い菜園の1か所に私はオクラを3本植えていた。朝起きて野菜に水をやろうと思って出てみたら、漏斗型にややくぼみのある大きな1枚の葉の上に、親子と思われる小さな雨蛙が3匹、炎天下にもかかわらずじっと蹲…

望郷のバラード

萩市の南郊に位置する木間(こま)という地域に、私の友人が二十年以上前に萩焼窯を築いて、夫婦二人で棲んでいる。私は亡妻と一緒によく話しに行っていた。彼は近年眼が不自用で新聞などの活字が読めないと言っていた。耳は確かだが、その彼が親切にも長年に…

三つの大切な事

「健康な身体」、「健全な精神」、「賢明な頭脳」。私はこれまで生きてきて、この三つがバランスよくとれた人は幸せだと思う。人は生まれたら普通両親に育てられる。ところが生まれて間もなく片親または両親との死別という事もある。これはその人の運命だろ…

帯状疱疹(ヘルペス)

ウイルスは昔はビールスと言っていた。調べてみると次のように説明してある。 「遺伝情報を荷う核酸(DNAまたはRNA)とそれを囲む蛋白殻(カプシド)からなる微粒子。大きさは20~300ナノメートル。それぞれのウイルスに特異な宿主細胞に寄生し、その蛋…

太郎

萩にいるとき玄関の間に「清風徐来」という額が掲げてあった。縦が三十センチ、横が百二十センチのかなり横長のものである。私はここに書かれてある言葉もだが、筆跡がなかなか良いので、山口に移ってきても、同じように玄関の間に掲げることにした。 この言…

太田道潅

豆が好きな者は「小忠実(こまめ)に元気よく動き回る」と言う言葉を耳にしたことがある。そう言えば父は豆が大好きで、八十四歳で死ぬ前の日まで元気にして居た。私も父に似て豆が好きで、今のところ年の割には元気に行動している。豆を食べれば元気になれると…

閑日随感  

荷風の『断腸亭日乗』を読むと、簡潔で実に上手い文章が目につく。とてもこのような名文は書けないが、真似して筆を執ってみる、と言っても実際はパソコンのキーを叩くのである。 昨日二時五十分の新幹線で家内は神戸へ向かった。家内にとっては愛娘(まなむ…

日随感

今日も朝早く三時に目が覚める。トイレに行き安楽椅子に腰をおろして昨夜から読み続きの『パスカルのパンセ抄』(飛鳥新書)を手にとってみる。肯綮に中る寸鉄人を殺すような文句が幾らでも出てくる。一例をあげると、 人から、あの人は数学者であるとか説教…

冬日偶感

二月も半ばになるというのに、荊妻は先月末からの風邪が完治しないので、代わりに行って呉れないかという。何処へ行くかといえば鍼灸院である。毎月第二火曜日に予約してあるから突然休むのは悪いと云う。私は以前両腕が突然上がらなくなったので鍼を打って…

如何に生きるか

今月二日の朝六時頃、長男から電話がかかり、彼の妻の父親が病院で急死されたとのことだった。父親は半月前から心臓疾患で入院治療中だったが、そろそろ自宅療養に切り換えるくらいに快方に向かって居られたそうである。それが突然亡くなられたとのことで、…

寒日偶感

正月末からの風邪はほぼ治った感じである。夜中に目が覚め時計を見ると二時過ぎ。階下のトイレへ行く。昨晩とろろ汁掛け飯を丼一杯食べた。水分を多く撮ったので夜中に目が覚めたのであろう。もう一休みと思い寝床に入る。 またしばらくしてトイレへ行きたく…