yama1931’s blog

長編小説とエッセイ集です。小説は、明治から昭和の終戦時まで、寒村の医療に生涯をささげた萩市(山口県)出身の村医師・緒方惟芳と彼を取り巻く人たちの生き様を実際の資料とフィクションを交えながら書き上げたものです。エッセイは、不定期に少しずつアップしていきます。感想をいただけるとありがたいです。【キーワード】「日露戦争」「看護兵」「軍隊手帳」 「陸軍看護兵」「看護兵」「軍隊手帳」「硫黄島」        ※ご感想や質問等は次のメールアドレスへお寄せください。yama1931taka@yahoo.co.jp

雑詠

    

  葉も枝も隠すがごとく咲き誇る白蓮の花散り敷けるなり

 

  花散りて若葉装(よそ)える白蓮の根元に咲ける一輪の花

 

  週に二度指圧に通う道すがら種々なる花の目を楽します

 

  田圃道名もなき花に目を留めてしばし佇みじっと見つめる

 

  名も知らぬ咲き乱れたる草花の春の来るを喜ぶがごと

 

  蟻や蜘蛛たとえ小さきものなれど共に生けるを喜ばざるや

 

  ガラス越し白き花咲く豌豆に花かとまごう蝶の羽ばたく

 

  青空に一直線の飛行雲しばし消えずに残りたるかな

 

  庭の草腰を屈めて取る妻に声をかけしは三年前か

 

  探し当て庭にたたずむ老妻に無理をするなと声をかけたり

 

  コロナ禍で入院すれば老夫妻永久(とわ)の別れに口もきかれず

 

  ベランダに玄米撒けば雀らが何処からともなく飛び来るなり

  

  いびつなる固き花梨(かりん)の実なれども赤き蕾の可憐なるかな

 

  風呂上り背中拭いてと老妻は我を呼びにて裸で立てり

 

  真夜中に階段這いて老妻は寝れぬからと我を起こせり

 

  後一年共に暮らせば六十年長く思えど短くもあり

 

  妻逝きて頭に浮かぶ一言は後悔先に立たずなるなり

 

  人は皆我執(がしゅう)を去れば清らなる心を持ちし仏となれり

 

  病院で声かけ呉れし一女性高校時代に我がクラスだと

 

  教え子の数知れぬほど多けれど会うて分かるは幾人なるや

 

                    2022・4・15 記す