yama1931’s blog

長編小説とエッセイ集です。小説は、明治から昭和の終戦時まで、寒村の医療に生涯をささげた萩市(山口県)出身の村医師・緒方惟芳と彼を取り巻く人たちの生き様を実際の資料とフィクションを交えながら書き上げたものです。エッセイは、不定期に少しずつアップしていきます。感想をいただけるとありがたいです。【キーワード】「日露戦争」「看護兵」「軍隊手帳」 「陸軍看護兵」「看護兵」「軍隊手帳」「硫黄島」※ご感想や質問等は次のメールアドレスへお寄せください。yama1931taka@yahoo.co.jp

シャキッと生きてスカッと死ぬ

 病院へ行くと車椅子に乗った病人、それも主として年寄りが多く見受けられる。彼らの中には死を待つのみかと思われるのが多い。ベッドに臥しているのは猶更である。医療技術の発達や良い薬が出来たため、このような状態でも中々人は死ねない。昔は長命を寿ぎ九十歳に達したら奇跡の如く喜んだが、今や女性の平均寿命が九十歳に近づいているというから驚くべきことである。然し健康寿命となるとそうはいかない。

人間はもとより全ての生物は生まれてくれば必ず死ぬ。人間以外の動物は如何に死すべきかといったことは考えないだろう。生死の問題を考えるのは人間だけだろう。私事に関係するが、妻が急死して死ということを身近なこととして考えるようになった。是まで身近な人で直接に死に対面した人が何人もいる。全くその死を知らなくても強く感じる人もいる。その筆頭は私の実母である。母は昭和七年二月に私を産み、その年の十一月に二十五歳の若さで亡くなった。