2021-02-20から1日間の記事一覧
私は先月妻の一周忌の法要を済ませた後、『漱石全集』の全巻をできる限り読もうと心に決めて、「第一巻」の『吾輩は猫である』から読み始めた。漱石は『猫』を日露戦争の最中に「ホトトギス」に連載し始め、続いて数々の小説や随筆を書くにつれて、圧倒的な人…
「オクラ」と聞いたら先ず何を連想するだろうか。万葉集の歌人山上憶良(やまのうえのおくら)を頭に描く人は、ある程度の教養を身につけた御仁(ごじん)かも知れない。彼の「子等を思う歌」は昔教科書に出ていた。その一部をあげてみよう。 瓜食(は)めば子ども…
大橋良介著『西田幾多郎』(ミネルヴァ書房)を読んでいたらこんな文章があった。 「散歩」は誰でもする平凡な行動である。いちおう、そう言えるであろう。しかし、そう自明的にいつでもできる行動ではない。たとえば生まれて、呼吸して、死ぬことは、生を享…
昨晩は早くも八時半に眠気を催した。風呂から上がってマッサージ器具に掛かっていたら、ついうとうとしたので、これはいけないと思ったので、まだ九時前だったが床を敷いて横になった。それからすぐ寝入ったのか、今朝眼が醒めたのは丁度三時だった。トイレ…
長編小説や固い本を読む気にならないので、久し振りに漱石の『永日小品』を書棚から取り出して読むことにした。昔読んで大筋を覚えているのもあるが、初めて目にするものもある。筋だけ追ったのでは読んだという事にはならないと思って、今回は一語一語に多…
昭和三十九年四月、私は前任校に三カ年勤めただけで母校の萩高校に転勤した。その少し前、父が脳卒中で倒れたからである。左半身が麻痺し、ものもはっきりとは言えなくなった。一カ月ほど安静にしていたら幸いにも回復できた。発症した時たまたま家で寝てい…
まず写真を見ていただこう。左側の皿は直径十六センチの陶器で、鳥の絵と「言問」の二字が書いてある。恐らく私の祖父か曾祖父が明治の初めかそれより前に、江戸か京都で手に入れたものであろう。いずれも多少絵柄は異なるが大体同じような鳥の略画と外にこ…
一 夜中の二時過ぎにトイレに行き寝床に戻ったが眠れないので、電子書籍で『私本・太平記』を読んだ。吉川英治のこの作品によって、足利尊氏と、『新・平家物語』に出てくる平清盛が、正当に評価される大きなきっかけになったと言われている。我々が戦前に小…
「雑」と「雅」は一見したところ似ている漢字だが、その意味するところは真反対である。雅は「みやびやかなことと。趣味の高尚なこと。相手を尊敬してその人の言行や詩文につけることば」で、「俗」や「鄙」(ひなびた)に対するものとして使われる」と、辞…