yama1931’s blog

長編小説とエッセイ集です。小説は、明治から昭和の終戦時まで、寒村の医療に生涯をささげた萩市(山口県)出身の村医師・緒方惟芳と彼を取り巻く人たちの生き様を実際の資料とフィクションを交えながら書き上げたものです。エッセイは、不定期に少しずつアップしていきます。感想をいただけるとありがたいです。【キーワード】「日露戦争」「看護兵」「軍隊手帳」 「陸軍看護兵」「看護兵」「軍隊手帳」「硫黄島」        ※ご感想や質問等は次のメールアドレスへお寄せください。yama1931taka@yahoo.co.jp

2021-02-20から1日間の記事一覧

梅と百(もも)鳥(とり)

私は先月妻の一周忌の法要を済ませた後、『漱石全集』の全巻をできる限り読もうと心に決めて、「第一巻」の『吾輩は猫である』から読み始めた。漱石は『猫』を日露戦争の最中に「ホトトギス」に連載し始め、続いて数々の小説や随筆を書くにつれて、圧倒的な人…

オクラと蛙

「オクラ」と聞いたら先ず何を連想するだろうか。万葉集の歌人山上憶良(やまのうえのおくら)を頭に描く人は、ある程度の教養を身につけた御仁(ごじん)かも知れない。彼の「子等を思う歌」は昔教科書に出ていた。その一部をあげてみよう。 瓜食(は)めば子ども…

私の散歩道

大橋良介著『西田幾多郎』(ミネルヴァ書房)を読んでいたらこんな文章があった。 「散歩」は誰でもする平凡な行動である。いちおう、そう言えるであろう。しかし、そう自明的にいつでもできる行動ではない。たとえば生まれて、呼吸して、死ぬことは、生を享…

朝起きて

昨晩は早くも八時半に眠気を催した。風呂から上がってマッサージ器具に掛かっていたら、ついうとうとしたので、これはいけないと思ったので、まだ九時前だったが床を敷いて横になった。それからすぐ寝入ったのか、今朝眼が醒めたのは丁度三時だった。トイレ…

天人五衰

長編小説や固い本を読む気にならないので、久し振りに漱石の『永日小品』を書棚から取り出して読むことにした。昔読んで大筋を覚えているのもあるが、初めて目にするものもある。筋だけ追ったのでは読んだという事にはならないと思って、今回は一語一語に多…

転居の記

昭和三十九年四月、私は前任校に三カ年勤めただけで母校の萩高校に転勤した。その少し前、父が脳卒中で倒れたからである。左半身が麻痺し、ものもはっきりとは言えなくなった。一カ月ほど安静にしていたら幸いにも回復できた。発症した時たまたま家で寝てい…

二枚の皿

まず写真を見ていただこう。左側の皿は直径十六センチの陶器で、鳥の絵と「言問」の二字が書いてある。恐らく私の祖父か曾祖父が明治の初めかそれより前に、江戸か京都で手に入れたものであろう。いずれも多少絵柄は異なるが大体同じような鳥の略画と外にこ…

露草

一 夜中の二時過ぎにトイレに行き寝床に戻ったが眠れないので、電子書籍で『私本・太平記』を読んだ。吉川英治のこの作品によって、足利尊氏と、『新・平家物語』に出てくる平清盛が、正当に評価される大きなきっかけになったと言われている。我々が戦前に小…

「雜」について

「雑」と「雅」は一見したところ似ている漢字だが、その意味するところは真反対である。雅は「みやびやかなことと。趣味の高尚なこと。相手を尊敬してその人の言行や詩文につけることば」で、「俗」や「鄙」(ひなびた)に対するものとして使われる」と、辞…